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2026.08.18
地域の動き

両津漁港の岸壁改良について

地域の動き

 両津漁港では、機能診断により既存岸壁の耐震・耐津波性能不足が判明したことから岸壁改良事業を進めている。本稿では、主要岸壁における課題と工法選定の経緯、グラウンドアンカー工法を用いた補強の概要、施工上の留意点および事業の進捗状況について紹介する。

1.両津漁港の概要
 両津漁港は、佐渡市の玄関口である両津港に隣接する佐渡島最大の陸揚拠点であり、定置網漁業をはじめとする沿岸漁業の基地として重要な役割を担っている。また、魚市場や流通施設が隣接しており、佐渡で水揚げされた水産物の集荷・流通を支える基幹漁港となっている。
 両津漁港は佐渡沿岸に位置する夷地区と、両津港背後の湖(加茂湖)に面する加茂湖地区がある。夷地区の漁業としては、佐渡沿岸での定置網漁が盛んであり、加茂湖地区おいてはカキ養殖が盛んである。また、水揚される魚介類においては、夏はイカ・マグロ・サザエ、冬はサバ・ブリなど季節ごとに強い特色が現れることも特徴である。

写真1-1 両津漁港(夷地区)航空写真

 両津漁港は、昭和26年に日本の漁港の中で全国的な規模での漁業を支援する大規模な漁港である第3種漁港に指定を受けた。また、昭和32年には漁港区域が拡大され、昭和44年に加茂湖地区も両津漁港の一部に指定された。昭和50年には漁港区域の変更がなされ、修築計画は現在も継続中である。

写真1-2 両津漁港(加茂湖地区)航空写真その1

 

写真1-3 両津漁港(加茂湖地区)航空写真その2

2.岸壁改良事業の背景
 両津漁港は、佐渡全土の漁獲物が集約される卸売市場及び島内で消費される石油類の供給を行う給油タンクを有しており、島内の漁業活動において非常に重要な漁港として位置付けられている。しかし、平成27年度に実施した漁港・海岸保全施設の機能診断の結果、主要岸壁で耐震・耐津波性能の不足が発覚した。
 主要岸壁は、写真1-1に掲載の⑤-2、⑤-4、⑤-5、⑤-6岸壁である。⑤-2岸壁については魚市場と直結しており、漁船による水揚げ、選別、出荷作業が日常的に行われるなど、漁業生産活動を支える重要な岸壁である。また、⑤-4、⑤-5、⑤-6岸壁については背後地が給油施設用地であり、佐渡島内で消費される石油類の約7割を供給する給油タンクがあり、漁業活動の安定化に加え、島民の生活の安定化を図るための重要な岸壁である。
 そのため、被災時における漁業活動の早期再開を計るとともに、石油類確保による島民の生活の安定化を図るため、主要岸壁の耐津波・耐震対策を行うべく、機能強化事業として岸壁改良事業がスタートした。

写真2-1 魚市場の様子(左:⑤―2岸壁両津側の風景、右:選別の様子)

3.既存岸壁の課題と検討
 ⑤-2岸壁を例に挙げて、岸壁改良事業について紹介する。既存岸壁の具体的な課題としては、①耐震性能の不足②津波時の安定性の不足③地盤反力の超過があげられる。①耐震性能の不足については、レベル1地震動(kh=0.17)に対して、滑動及び偏心傾斜荷重で安全率が不足する結果となった。②津波時の安定性の不足については、L1津波シミュレーションの結果より津波引波時には滑動・転倒、押波時には転倒で安全率が不足する結果となり、津波で海側の水位が急激に低下した場合、背後土圧と残留水位により岸壁が沖側へ押し出される危険があることがわかった。③地盤反力の超過については、最大地盤反力が許容値である500kN/m2を超過しており、荷重が岸壁前趾に集中する結果となった。

表3-1 機能診断結果一覧

 岸壁の改良案について、次の3案で施工性・経済性・周辺環境に係る影響について比較検討を実施した。
①案:背面一体化コンクリート工法は、既設岸壁の陸側に場所打ちコンクリートを打設して岸壁と一体化させる工法である。安定性は確保できるが、工事費が高く、施工中に不安定となる期間があるという欠点がある。

図3-1 案①:背面一体化コンクリート工法

②案:腹付けコンクリート工法は、既設岸壁の海側に場所打ちコンクリートを打設して岸壁と一体化させる工法である。①案より安価であるが、港内が狭くなり、漁船利用に影響があるという欠点がある。

図3-2 案②:腹付けコンクリート工法

③案:グランドアンカー工法+基礎拡幅は、既設岸壁を残したままグラウンドアンカーを打設することで、岸壁と基礎地盤定着させて補強する工法である。基礎の拡幅は、アンカーだけでは不十分な偏心傾斜を確保する目的がある。前述の2案より安価であり、既設岸壁の形状は変わらないため、従来の漁港機能を維持しやすく、実績も豊富である。以上の検討により、⑤-2岸壁については③案で岸壁改良を実施することとした。

図3-3 ③案:グランドアンカー工法+基礎拡幅

 両津漁港における岸壁改良においては、基本的にアンカー工法による補強を行っているが、⑤-6岸壁においては、施設延長205mのうち196mを②案と同様の前面腹付けにより補強を行っている。⑤-6岸壁は重力式のブロック積み岸壁であり、アンカーによる補強を行う場合、転倒に対する曲げモーメントを確保するためにアンカーを斜め方向に打設する必要がある。この時、上部工の一部や防舷材等付属設備の撤去・復旧に費用を要するため、アンカー工が経済面で不利となる。また、隅角部より9mについては潮通し機能を活かすため、アンカー工法により補強を行っている。

図3-4 ⑤-6岸壁横断図(左:196m箇所、右:9m箇所)

4.施工上の課題と対策
 ⑤-2岸壁については、背後地が魚市場であり陸揚げ作業時には漁船を係船する必要があるため、漁業者と作業工程について調整する必要があった。アンカー工で使用する削孔機や捨石投入に用いる作業船については、迅速な移動が困難かつ周辺利用者への騒音被害についても留意する必要があった。そのため、施工は基本的に市場の稼働後であり、限られた時間の中で施工を円滑に進める必要があった。また、昨年度の工事では豊漁のため着手時期を遅らせるよう漁業者からの要望もあり、漁業に影響が出ないよう配慮して工事を進めた。

写真4-1 施工状況
写真4-2 陸揚げ状況

5.事業の進捗状況
 改良を予定している岸壁の9割以上は令和7年度までに完了しており、令和9年度に⑤-2岸壁の基礎捨石の拡幅を実施して事業は完了となる。

6.おわりに
 関係各位のご尽力により岸壁改良事業が完了目前となったことについて、この場を借りて、本業務に携わった皆様に感謝申し上げる。
 今後、漁港施設でも供用50年以上経過する施設が多くなることに伴う維持管理の補修工事や、計画潮位見直しに伴う整備計画の見直しなど、更なる改修工事が必要となることが想定される。そのため、漁港管理者として両津漁港ひいては佐渡島内の県営漁港で安全・安心の利用が行えるよう尽力していきたい。

■問い合わせ先
新潟県佐渡地域振興局地域整備部(港湾空港) 漁港課 佐藤 幸志朗
電話:0259-27-3314  /  Eメール:ngt111141@pref.niigata.lg.jp




 

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