信濃川河川改修事業について

- 新潟県
- 十日町地域振興局
- 地域整備部治水課
信濃川水系緊急治水対策プロジェクトの推進
令和元年東日本台風では千曲川上流域から信濃川中流域の広域にわたって甚大な被害が発生したことから、国、新潟県、長野県、沿川48市町村が連携し令和2年1月に「信濃川水系緊急治水対策プロジェクト」を発足した。ここでは、信濃川県管理区間で実施しているプロジェクトの進捗について紹介する。
1 信濃川の概要
信濃川は、全長367km(千曲川:約214km、信濃川:約153km)、流域面積約11,900km2の国内で最も長い一級河川である。このうち新潟県の管理区間(以下「県管理区間」という。)は、JR信濃川発電所宮中取水ダムから長野県境までの延長約18kmである。
県管理区間が含まれる信濃川上流圏域(図-1)は、昭和58年9月洪水と同規模の洪水が発生しても堤防の決壊・越水等による家屋の浸水被害の防止又は軽減を図るため、平成29年5月に河川整備計画を策定した。

県管理区間では、8地区、延長約8.4㎞を改修区間に位置付け(図-2)、平成29年から交付金事業により河川改修に着手したが、その矢先の令和元年東日本台風(以下「東日本台風」という。)による洪水で津南町を中心に甚大な被害を受けた。

2 東日本台風の気象状況
東日本台風は、令和元年10月12日の夕方から夜にかけて非常に強い勢力を保ったまま東海・関東地方に上陸し、台風本体の発達した雨雲(写真-1)の影響により各地で大雨をもたらした。

この台風で、新潟県と長野県において県内初となる大雨特別警報が発令され、津南観測所では総雨量233mmを記録したほか、信濃川上流域(千曲川)の長野県の観測所においては300mmを超える総雨量を記録した(図-3)。

3 信濃川の水位
県管理区間に設置してある割野水位観測所では、10月13日の1時頃から氾濫危険水位204.95mを超過し、同日8時頃に既往最高水位206.65mを記録、その後も高い水位は継続し氾濫危険水位を約16時間超過し続けた(図-4)。

4 東日本台風の主な被害
県管理区間では、約65haの範囲が浸水し、津南町の巻下・小島・押付地区、段野団地地区、田中地区、灰雨地区、足滝地区の5地区で家屋等の浸水被害(床下浸水17戸、床上浸水4戸)が発生した(写真-2~写真-5)。




5 信濃川水系緊急治水対策プロジェクトの概要
東日本台風を受け信濃川流域では、県管理区間以外でも信濃川中流域や千曲川上流域など広範囲にわたって甚大な被害が発生したことから、国、新潟県、長野県、沿川48市町村が連携し令和2年1月に「信濃川水系緊急治水対策プロジェクト(以下「プロジェクト」という。)」を発足した。
プロジェクトでは、令和6年度末(令和7年度出水期)までに東日本台風規模の流量を越水させない対策の完了を中間目標とし、県管理区間においては築堤、掘削及び護岸を対策メニューに位置付けた。
家屋浸水被害のあった5地区(巻下・小島・押付地区、段野団地地区、田中地区、灰雨地区、足滝地区)は令和3年1月に河川災害復旧等関連緊急事業(以下「復緊事業」という。)が採択され改修を加速し、それ以外の3地区(割野地区、美雪町地区、反里地区)は引き続き交付金事業で重点的に改修を進めることとした(写真-6)。

6 プロジェクトの進捗状況
6-1 復緊事業工区
段野団地地区(写真-7)は、全地区で最も早い令和4年度に工事を完了した。

灰雨地区(写真-8)は、防護対象である背後家屋の移転補償を回避するため河川整備計画の堤防法線を川側へ前出しし、河積阻害や射流の発生条件等を考慮し堤防構造は「特殊堤+もたれ式擁壁」を採用した。工事は令和6年度に完了した。

巻下・小島・押付地区(写真-9)は、築堤盛土量約14万m3と全地区のなかで築堤規模が最大である。信濃川は現地盤の透水係数が高いため、一般的な透水係数の土砂で築堤を行った場合、背後にパイピングが生じる恐れがあることから、浸透流解析を行い、現地盤と同程度の透水係数の土砂で築堤し、令和6年度末までに必要堤防高を確保した。現在は堤防天端舗装等の残工事を実施しており、令和7年度内の工事完了を予定している。

田中地区(写真-10)は、多くの観光客を呼び込む人気の温泉宿があり、宿からは信濃川が一望でき、春には宿の周りを囲む桜により美しい景観が形成される。
築堤計画の策定に当たっては地元と十分に協議を重ね、宿からの眺望と桜を保全するため、宿に近接する区間は、河川整備計画堤防法線を前出しし、河積阻害を考慮し堤防構造は「特殊堤+大型ブロック積」を採用した。
令和7年度出水期までに必要な堤防高を確保し、現在は堤防天端舗装等の残工事を実施しており、令和7年度内の工事完了を予定している。

足滝地区(写真-11)では、河川整備計画の堤防計画に対して「堤防が高すぎる」、「住みづらい地区になる」といった地域住民の反発から堤防整備等に係る協議会設置の要望を受け、「足滝地区堤防整備検討会(以下「検討会」という。)」を設置した。合計4回の検討会と、住民一人一人の意見を伺う「座談会」を計3回開催し、専門家、住民、行政が堤防整備のあり方を議論し、堤防計画を決定した。
また、検討会で景観に関しても工夫を凝らすよう要望を受けたことから、その後に「景観に関する意見徴収会」で景観検討を実施し、堤防を曲線で整備することや河川へアクセスする階段を設置することで住民との合意形成を図った。
令和7年度出水期までに必要な堤防高を確保し、現在は堤防天端舗装等の残工事を実施しており、令和7年度内の工事完了を予定している。

6-2 交付金事業工区
割野地区、美雪町地区、反里地区(写真-12)では、HWLより保全対象が低い区間において、HWL堤での暫定整備を実施し、令和7年度出水期までに概ね完了した。今後は引き続き交付金事業を活用し、築堤や護岸の整備を進めていく。

7 おわりに
関係者のご尽力によりプロジェクトの中間目標を概ね達成できた。この場を借りて、本事業に携わった皆様に感謝申し上げる。
また、信濃川上流圏域河川整備計画が令和6年10月に東日本台風洪水を踏まえたものに一部変更され、流下能力が不足する巻下・小島・押付地区及び美雪町地区の2地区では元計画の整備に加え新たな河道掘削が追加された。今後も引き続き効果的・効率的な河川改修に努め、地域の安心・安全を確保していきたい。
■問い合わせ先 新潟県 十日町地域振興局 地域整備部治水課 電話:025-757-5526 |