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2025.09.10
技術レポート

多用途ブロックによる早期応急対策と有用性について

大谷災害対策追加工事


 2024年に起きた能登半島地震によって、石川県珠洲市大谷地区で地すべり性崩壊が起き多くの被害をもたらしました。その際の応急対策として多用途ブロックコンバリアSが使用されました。本報文では、今回の災害の被害状況や現場状況についてとコンバリアSが採用に至った経緯、特徴についてご紹介いたします。

1. はじめに
 2024年の能登半島地震により、各所で大きな被害をもたらすこととなったが、珠洲市大谷地区においても山地災害が発生し地すべり性崩壊によって多くの土砂が市街地へと流れ込んだ。(写真1)

 崩壊範囲については斜面延長約370m、幅約120mとされており、地すべり移動量は頭部で約10m、末端部で約50m程度と推定されている。これにより山際付近の多数の民家は土砂に埋没し、県道も一部が通行止めとなる被害が発生した。
 この災害への応急対策工法として、コンバリアSが採用され、令和7年5月頃にブロック積谷止工として設置が完了した。

2. コンバリアSが採用された経緯
 ブロック堰堤による応急対策が実施されることになり、多用途コンクリートブロック-コンバリアSが採用された。採用経緯として、被災箇所はブロック堰堤による早期の応急対策工が必要であった。そこで、①工場製作による二次製品のため製作期間や工期の大幅な短縮が可能となる、②上下左右で堅固なかみ合わせ構造が可能で、直積、階段積など多様な積み方が可能、③各種工法に転用できる、などの理由により、コンバリアS 2.0tを492個収め、石川県内における林野庁の業務として初の採用となった。(写真2)

3.そのほかの事例について
 国土交通省 北陸地方整備局 国道249号啓開作業その5の業務において、輪島市門前町の護岸にのり面保護工としてコンバリアS2.0tを納入した。復旧延長については約40m程度であり、441個収めることとなった。この現場は石川県内で初となる国土交通省での実績となった。(写真3)

コンバリアSとは
 コンバリアSは、ブロックを積み上げて構造物を構築することを想定しており、従来の根固めブロックの突起を迎合突起形状とし、上下左右の堅固なかみ合わせ構造を実現するとともに、積み方を工夫することで様々な工種に適用することが可能になるよう開発されたコンクリートブロック(以降、ブロックとする)である。

4.1 特徴Ⅰ:多様な使用目的に対応
 図2で示す通り、コンバリアSは多様な積み方を可能とし、経済的な断面設定を採用することで、様々な用途に適用できる製品である。砂防えん堤、床固工、導流堤工、護床工、護岸工、土留工、擁壁工など広範囲にわたる工種に使用が可能である。また、土木工事仮設材としての活用だけでなく、災害・防災用備蓄資材としても有効な製品である。無人化施工にも対応しており、連結フックは常設しているため、転用や連結も容易に行うことができる。

4.2 特徴Ⅱ:水理模型実験などで検証
 コンバリアSは、水理模型実験などを行っており、いくつかの実験結果から、従来のブロックと比較し、土砂の捕捉効果や耐久性に優れると考えられる。
・傾斜模型実験
 かみ合わせ効果を検証するため、傾斜台に模型を千鳥状に積み上げ崩壊する角度を計測した。模型はかみ合わせ有り無しの2種類に合わせ、従来型、直方体型の全4種類とした。その結果、コンバリアSは全方向からの崩壊角が大きく、かみ合わせの効果により、縦断・横断方向共に滑動抑止効果を発揮していることが分かった。

・土石流模型実験
 簡易的な小規模水路を用いた土石流模型実験を行った。コンバリアSの模型を積み上げ、水路上流から一定量の水や小型の角材を流し経過を観察した。その結果、土砂は捕捉するが流水については越流することなくブロック間を透過しており、透過型えん堤と同じ機能を有する可能性があることが分かった。

・その他
 上記実験の他、「土砂捕捉実験」「透水性とその機能に関する研究」「ブロック堰堤の屈とう性に関する実験」などコンバリアSの性能や機能に関する結果、検証を砂防学会誌や砂防学会研究発表会にて発表している。

4.3 特徴Ⅲ:無人化施工への対応
 近年、火山地帯や被災地等の人が立ち入れない危険な場所での作業において無人化施工が必要とされる場合がある。コンバリアSは、製品の突起上部および製品の側面に目印をつけているため、遠隔操作を行うオペレーターの視認性を確保できる。また、施工時の吊上げと据付を行うための無人化施工用吊上げ孔を製品の中心につけており、バックホウ等に装着したアタッチメントによって吊り上げから据付までを施工機械一台で行うことが可能になる。

5. おわりに
 コンバリアSは高い透水性により越流を抑制する性能や、かみ合わせによる縦横断方向の耐久性の高さ等、構造物としても優れていると考えられる。また、様々な状況で使用されることを想定しているため、工場製作専用とすることで、ブロックの品質や精度が保証されている。これらの理由から多用途に使用することができる。
 災害が起きた際、早期の復旧が求められる中で、二次被害によるその後の被害拡大を抑える応急対策も必要となる。その際、被災した現場状況に合わせて多用途に対応できるコンバリアSは今後の災害現場において多くの需要があるのではないかと考えられる。
 今回のご紹介あたり、発注者である 農林水産省 林野庁並びに国土交通省 能登復興事務所、また本工事に携わったご関係者様には深く感謝申し上げます。

参考文献
1)令和6年度砂防学会研究発表会概要集
2)2020年度砂防学会研究発表会概要集

●問い合わせ先
共和コンクリート工業株式会社 北陸支店
TEL(0766)52-0463
共和コンクリート工業株式会社 石川営業所
TEL(076)204-7520

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