プレキャストキーパー主梁架設における3Dモデル活用

- 北陸PC防雪技術協会
- 日本サミコン株式会社
- 本多美由貴
1. はじめに
キーパーは、主梁・柱・下部工・土砂囲い壁で構成され、道路際に設置することで崩落雪や落石から道路を保護する構造物である(写真-1)。道路片側のみで施工が完了することから、改良道路はもちろん、未改良道路や幅員が狭い道路で構造物を設ける余地が少ない箇所においても設置が可能な構造物である。
主梁および柱には、工場製作のプレキャスト部材が用いられ、現場ではこれらを搬入して組立てるプレキャスト工法が採用されている(図-1)。主梁は、横梁・山側横梁・ウェブ・スラブで構成され(図-2)、架設後に横梁へPC鋼材を配置して緊張を行うことで一体化する構造となっている1)。
キーパーは、道路の縦断線形および平面線形に合わせて組立てを行う必要があるが、特に急な縦断勾配や小さい曲線半径等の線形が厳しい条件が重なる場合、隣接する主梁間で適切な目地間隙を確保することが困難であることが課題となっていた。
主梁同士は、スラブ部、横梁部及び山側横梁部で隣接しており、目地間隔は約10mmを確保することとしているが、過去には、スラブ部の目地間隔は適切に確保できても、横梁部の目地間隙が約38mmまで拡大した事例が確認されている(写真-2)。
本稿では、これらの課題解決を目的として、3Dモデルを用いた事前検証および対策立案を行った内容について報告する。
写真-1 キーパー施工例写真
図-1 キーパーの3Dモデル
図-2 主梁の構成(3Dモデル)
写真-2 既設キーパーの横梁間隙
2.現場概要
発注官庁:南砺市
路 線 名:市道山の神線
工 事 名:4災23号市道山の神線道路災害復旧工事
工事場所:富山県南砺市高草嶺 地内
工事概要:上部工32.220m(柱センター位置)/ 主梁数14セット(3ブロック)
縦断勾配:上り3.74%(全ブロック共通)
曲線半径:R=25~90m
図-3 桁割平面図
図-4 横断図
3. 検証・対策立案
本課題に対し、以下の手順により3Dモデルを活用した検証および対策立案を行った。
(1)3Dモデルによる現場再現
キーパーの主梁・柱・下部工を3D上で再現し、現場と同様の手順で組立てることで、架設時の状況を仮想的に再現し、現場条件が横梁間隙に及ぼす影響を把握し、問題点の抽出と改善策の検討を行うこととした。
(2)横梁型枠面の調整量の定量化
横梁間に適切な目地間隔を確保するため、3D上で型枠面の調整を仮想的に行い、隣接する横梁間で適切な目地間隙が確保できるかを検証し、必要となる型枠調整量を定量的に算出することとした。
(3)工場製作と架設での反映と実証
3D上での検証により得られた最適な調整量をもとに、工場にて横梁の型枠調整を実施し、主梁の製作を行うこととし、さらに、実際の架設により、提案した対策の妥当性および実施性を確認することとした。
4.実施結果・効果
3Dモデルによる現場再現により、急勾配・急カーブが重なる条件下では、従来手法で製作及び施工した場合、約10mmの間隙が約24mmに拡大する可能性があることを事前に把握することができた(図-5・6)。
改善策として、横梁の型枠面を3D上で調整し(図-7)、適切な間隙を確保するための最適調整量を算出した。その結果、間隙は約12mmまで改善することが確認できた(図-8)。
導出した調整量(図-9)をもとに、工場で型枠調整を施した主梁を製作し(写真-3)、現場で架設を行ったところ、想定していた約10mmの間隙を確保した状態で架設することができた(写真-4)。これにより、3Dモデルを活用した型枠調整が、適切な間隙確保に有効であることが実証された。
図-5 現場再現3Dモデル(全体)
図-6 現場再現3Dモデル(横梁部)
図-7 3D上における型枠面の調整
図-8 型枠調整3Dモデル(横梁部)
写真-3 型枠調整(打設時鉄筋除去)
図-9 型枠調整量
写真-4 架設キーパーの横梁間隙(道路側から)
5.おわりに
本稿では、キーパーの架設において課題となる横梁間隙の変動に対して、3Dモデルを活用して事前検証および対策立案を行った。3Dモデルによる仮想施工は、現場条件の影響を精度よく再現でき、型枠調整量の算定と工場製作への反映に大きく寄与した。事前の対策により適切な目地間隔を確保できることが示され、本手法の有用性が確認された。
今後は、他現場への展開や設計段階からの3Dモデル活用によるさらなる合理化、省力化を目指していきたい。
【参考文献】
1) 道路防雪施設マニュアル[コンクリート構造編] 平成20年3月 道路防雪施設検討委員会編
■問合せ先
日本サミコン株式会社 技術部 TEL:025-286-4443